生産ラインを自動化する方法と取り組む際のポイント
近年、製造業ではエネルギー価格の高騰や就業者の高齢化、グローバル化による競争の激化など、さまざまな課題に直面しています。
工場が持続的な成長を図り競争優位性を確保するには、デジタル技術を活用して生産体制の変革を目指す“DX(デジタルトランスフォーメーション)”に取り組むことが重要です。その取り組みの一つといえるのが“生産ラインの自動化”です。
この記事では、生産ラインの自動化によって期待できることや自動化する方法、取り組む際のポイントについて解説します。
目次[非表示]
- 1.生産ラインの自動化による効果
- 2.生産ラインを自動化する方法
- 2.1.産業用ロボットの導入
- 2.2.AGV・AMRの導入
- 2.3.IoT・AIの活用
- 3.生産ラインの自動化を進めるポイント
- 4.FAソリューション導入による生産ラインの自動化事例
- 4.1.➀ECU ASSY組立検査ライン
- 4.2.②機電一体化製品組立検査ライン
- 4.3.③車載電池組立ライン▼実績
- 5.まとめ
生産ラインの自動化による効果
生産ラインを自動化することによって、次の効果が期待できます。
▼期待できる効果
- 生産性の向上
- 品質の安定化
- 安全性の向上 など
人の手で加工・組立て・検査などの作業を行う場合には、従業員によって精度とスピードにばらつきが生じたり、ヒューマンエラーが起きたりする可能性があります。
生産ラインを自動化すると、一定のパフォーマンスで時間に関係なく稼働ができるようになり、生産性を高めることが可能です。また、従業員による精度のばらつきやヒューマンエラーを回避することで、生産品質の安定化にもつながります。
さらに、工場によっては高温多湿や騒音が発生する環境での作業が必要になったり、危険物を取り扱ったりする場合があります。作業を自動化すれば、製造現場での事故を防止することが可能です。
生産ラインを自動化する方法
生産ラインを自動化するには、作業内容・工程に合わせたロボットやシステムを導入する必要があります。
産業用ロボットの導入
産業用ロボットとは、人の代わりに組立て・溶接・搬送・塗装・検査などの作業を自動で行うロボットを指します。
▼産業用ロボットの基本構成
構成 |
概要 |
マニピュレータ |
腕や手の動きを再現するための可動軸・アームを備えたロボット本体 |
制御ボックス |
マニピュレータの動きをコントロールするアンプや基板などが格納された装置 |
ティーチングペンダント |
ロボットを制御するプログラムの作成やティーチング作業を行う入力・操作装置 |
産業用ロボットにはさまざまな種類があり、それぞれ対応できる動作が異なるため、生産ラインの工程や用途に合わせて導入することが必要です。
▼産業用ロボットの主な種類
種類 |
特徴 |
垂直多関節ロボット |
人の腕に近い自由度の高い動作ができるため、組立て・搬送・検査などの汎用的な作業に使用される |
水平多関節ロボット |
水平方向(横移動)と垂直方向(縦移動)の平面的な動作ができ、主に組立て作業に使用される |
パラレルリンクロボット |
3~4本のアームで先端部分を支える動作ができ、主に製品や部品の運搬作業に使用される |
直交ロボット |
複数の軸を組み合わせて平面上の直線的な動作ができ、主に組立てや運搬作業に使用される |
AGV・AMRの導入
生産ラインで発生する製品・部品などの運搬作業を自動化するには、AGV(無人搬送車)やAMR(自立走行搬送ロボット)を導入する方法があります。
▼AGV・AMRの概要
種類 |
概要 |
AGV |
床面に設置した磁気テープやガイドラインに沿って指定のルートを走行する搬送ロボット |
AMR |
カメラ・センサーを用いたセンシング技術によって周辺環境の地図を作成して、走行ルートを自動で決定して走行する搬送ロボット |
AGVは、あらかじめ決めたルートを走行するため、特定の区間を繰り返して往復する必要がある現場に適しています。
一方のAMRは、搬送ロボット本体が走行ルートを決定して、人や障害物をよけながら自律的に走行することが可能です。生産ラインの工程・レイアウトが時期によって変わる場合や、人が作業するエリアなどに適しています。
IoT・AIの活用
IoT・AIを導入して、生産ラインで発生する作業を自律的に制御する方法です。IoT・AIを活用することで、生産設備の稼働データを自動で収集・蓄積して、AIが学習した内容に応じて自律的に制御・判別できるようになります。
▼IoT・AIを活用した自動化の例
- 生産設備のパラメータを監視して温度・圧力・水位をAIが自動制御する
- カメラ・センサーを用いて製品や原料の品質不良をAIが自動検出する
- AI搭載の産業用ロボットでティーチングの作業を自動化する など
品質検査にAIを活用すると、人の感覚や経験に依存していた目視検査の品質を安定化できるほか、人では判断が難しい微細な異常まで検出することが可能です。
また、産業用ロボットにAIを組み込むと、定型作業の自動化だけでなく、対象物の外形・位置などが規定から外れている場合でも、AIの判断によって最適な動作を行えることも期待できます。
生産ラインの自動化を進めるポイント
生産ラインの自動化を進める際に押さえておくポイントは、以下のとおりです。
▼ポイント
- 目的と課題を明確化する
- スモールスタートで取り組む
- 保守・運用管理を行う人材を確保する
「なぜ生産ラインを自動化したいのか」「どのような課題を解決したいのか」を明確にしておく必要があります。現場の声を踏まえて目的を明確にすることで、自動化が必要な工程や手段を選定でき、生産体制の改善を図れます。
また、生産ライン全体を一度に自動化すると、初期導入のコストが負担となったり、工程の変化によってトラブルが生じたりする可能性があります。自動化の必要性が高い工程からスタートして、効果検証を行いながら段階的に範囲を拡大していくことがポイントです。
さらに自動化するロボットや設備を導入したあとは、安定稼働させるための保守・運用管理を行うことが欠かせません。自社で保守点検やメンテナンスを行える人材を採用または育成することが重要です。
FAソリューション導入による生産ラインの自動化事例
『萩原テクノソリューションズ』では、手組みラインからトランスファーラインまでを自動化できる生産体制を構築する『FAソリューション』を提供しています。
▼生産ラインを自動化するイメージ
各工程の自動化に加えて、生産設備やロボットから取得したデータを活用してDXの推進を後押しします。
以下では、萩原テクノソリューションズがサポートした事例をご紹介します。
➀ECU ASSY組立検査ライン
▼事例
・プレスフィットコネクタ(PFC)実装・検査
・基板検査(フィクスチャー検査、マイコン書込み、温度検査、性能検査、外観検査など)
・組立機(塗布、ネジ締めなど)
・ASSY検査(性能検査、シール貼り、外観検査など)
・トレサビや品管用データ解析などのサーバ構築
・IoT/DXの提案
車載ECU(Electronic Control Unit)とは、車両の各種システムを制御する為の電子制御ユニットです。
ボディ系・パワートレイン系・セーフティ系・インフォテインメント系など、さまざまなものがECUによってコントロールされています。
ECUは、マイコンが載った基板とコネクタ、ケースで構成されており、それら部品を組立てたものがASSY(アッセンブリ)品で完成形となります。
萩原テクノソリューションズは、その組立工程や検査工程において、スタンドアロンの設備や、手組ラインから自動化ラインまで、お客様のご要求に合わせたシステム提案を行います。
近年、ECUの検査は自動化が進んでおり、効率的かつ正確な検査が求められています。自動化により、検査の工数を削減し、品質を向上させることが可能です。
②機電一体化製品組立検査ライン
▼事例
・ロボットによるGセンサ・ヨーセンサの動的性能検査
・オルタネータ、EPS、MG ASSY などのモータ性能検査
・レーダーASSY などの動的性能検査
機電一体型製品とは、機械要素と電子要素を一体化した製品のことを指します。これにより、製品の小型化、高効率化、高精度化が実現されています。
その為、機械要素の組立検査だけでなく、基板の組立検査、電気的機能検査まで求められることが多くなってきています。
萩原テクノソリューションズでは、各種アクチュエータを動作(制御)させる設備とその動きを検査する装置をまとめて提案可能であり、同期計測などのタイミングが重要な検査を自社内で取りまとめができるため、 デバッグ期間などの費用軽減を見込めます。
計測精度や、設備とテスタの不具合の切り分けなどに課題をお持ちの方は、是非萩原テクノソリューションズにご相談ください。
③車載電池組立ライン
▼実績
電池セル・電池モジュール・電池パックの組立・検査まで対応いたします。
充放電システムも提案可能です。
まとめ
この記事では、生産ラインの自動化について以下の内容を解説しました。
- 生産ラインの自動化によって期待できること
- 生産ラインを自動化する方法
- 生産ラインの自動化を進めるポイント
- 萩原テクノソリューションズの事例
生産ラインを自動化すると、効率的かつ安定した生産を維持できるようになるほか、作業環境の安全性が向上します。どのような作業・工程を自動化するかによって手段が異なるため、用途に合わせて選ぶことが重要です。
また、事前に目的と課題を明確にしたうえで一部の工程から自動化を進めるとともに、保守運用を行える人材を確保することもポイントといえます。
『萩原テクノソリューションズ』では、仕様の検討から現地の据付まで生産ラインの一貫した提案が可能です。グループ会社となる萩原エンジニアリング株式会社との協働により、高効率なものづくりを実現するソリューションを提供しています。
詳しくは、こちらのページをご確認ください。