産業用PCで何ができる? 注目される背景とメリット・デメリット
近年、製造業や情報・通信業をはじめとしたさまざまな業界でデジタル化の取り組みが進んでいます。そのようななか、産業現場をデジタル化するうえで注目されているのが産業用パソコン(以下、PCと表記)です。
産業用PCの導入に興味を持ちつつ、「どのような特徴やメリットがあるのか分からない」「そもそもなぜ注目されているのか分からない」という担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、産業用PCが注目される背景とともに、メリット・デメリットをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.産業用PCとは
- 2.産業用PCが注目される背景
- 3.産業用PCのメリット
- 3.1.①長期安定供給できる
- 3.2.②過酷な環境にも耐えられる
- 3.3.③長時間連続して運転できる
- 3.4.④現場に合わせてカスタマイズできる
- 4.産業用PCのデメリット
- 4.1.①民生用PCと比較して導入コストが高い
- 4.2.②納品までの期間が長い
- 5.まとめ
産業用PCとは
産業用PCとは、産業用途で使用されるコンピュータのことです。明確な定義はありませんが、産業用コンピュータやインダストリアルPC、産業用コントローラ、エンベデッドPCなどと呼ばれることもあります。
一方、オフィスや家庭などで使用されるコンピュータは“民生用PC”に分類されます。産業用PCと民生用PCは用途や供給期間をはじめ複数の点で異なります。主な違いは以下のとおりです。
▼産業用PCと民生用PCの違い
項目 |
産業用PC |
民生用PC |
供給期間 |
長い |
短い |
耐環境性 |
高い |
低い |
連続稼働時間 |
24時間365日 |
1日数時間 |
カスタマイズ性 |
高い |
低い |
導入コスト |
高い |
低い |
納品期間 |
長い |
短い |
活用シーン |
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産業用PCは、製造業や小売業、農業、医療などさまざまな分野で使用する装置に組み込むことでデジタル化を進め、生産性や業務効率を高めることが期待されています。
産業用PCが注目される背景
産業用PCが注目される背景には、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)、ロボットを活用したスマートファクトリーの推進があると考えられます。
少子高齢化が進む日本では、製造業の就業者数が減少していることや、他業種に比べて高齢者、女性の就業が進んでいないことが問題視されています。
また、第4次産業革命による働き方の変化も無視できません。経済産業省 中部経済産業局は2017年、『「 スマートファクトリーロードマップ 」〜 第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて 〜』内で、ものづくりを取り巻く環境や消費者ニーズが今後大きく変化すると予想しています。
変化し続けるものづくりの未来の姿の一つとして、IoTやロボットを活用したものづくりのスマート化、いわゆるスマートファクトリーの推進が重要であることを示しています。
スマートファクトリーを実現するには、産業用PCや産業用ロボットなどを用いたFA(Factory Automation:ファクトリーオートメーション)(※)の実現が不可欠です。このような背景から、産業用PCが注目されています。
※FAとは、生産工程の自動化を図るためのシステムのこと。
出典:近畿経済産業局 製造産業課『ものづくり基盤産業の人手不足解決手法の検証について』/経済産業省 中部経済産業局『「 スマートファクトリーロードマップ 」〜 第4次産業⾰命に対応したものづくりの実現に向けて 〜』
産業用PCのメリット
FAの実現に向けて産業用PCを使用するメリットは複数あります。ここでは、主なメリットとして4つをピックアップしてご紹介します。
①長期安定供給できる
1つ目のメリットは、長期安定供給できることです。一般的に、民生用PCは1~2年でモデルチェンジが行われたり、製造中止になったり、入れ替えのサイクルが短期間という特徴があります。
一方、産業用PCの一般的なサイクルは5~10年程度とされ、一度導入すれば10年以上使い続けられることもあります。長期安定供給を可能にしている理由の一つとして、PCメーカーが産業用PCの製品サイクルを長期間に設定して管理していることが挙げられます。
長期的に安定して運用できることにより、入れ替えにかかるコストや手間、入れ替え後の動作検証にかかる担当者の労力などを最小限に抑えることが可能です。
②過酷な環境にも耐えられる
2つ目のメリットは、過酷な環境にも耐えられることです。産業用PCは、民生用PCに比べて耐環境性に優れています。
これにより、高温多湿の場所や振動・衝撃の影響を受けやすい場所、粉塵が舞いやすい場所など、過酷な環境で使用する機器に産業用PCを組み込む際にも安心して使用できます。
③長時間連続して運転できる
3つ目のメリットは、長時間連続して運転できることです。一般的に、民生用PCは1日数時間使用したのち、電源を切ることを想定して数年程度の耐用年数で製造されているといわれています。
一方、産業用PCには耐久性・信頼性の高い部品が採用されているのが特徴です。そのため、製造現場で重要な装置、24時間365日連続して監視を行う装置など、長時間連続して運転しなければならない機器やシステムには産業用PCが適しているといえます。
④現場に合わせてカスタマイズできる
4つ目のメリットは、現場に合わせてカスタマイズできることです。先述したように、産業用PCはさまざまな分野で使用する機器やシステムに組み込んで使用するのが主な活用方法です。
メーカーによっても異なりますが、一般的に性能や形状、通信規格などのカスタマイズに対応しているため、使用する現場のニーズに合わせて必要な性能や耐久性を備えた産業用PCを導入できます。
産業用PCのデメリット
産業用PCは導入によって多くのメリットが期待できる一方で、デメリットもあります。ここでは、そのうち2つのデメリットをご紹介します。
①民生用PCと比較して導入コストが高い
1つ目のデメリットは、民生用PCと比べて導入にコストがかかりやすいことです。産業用PCは民生用PCと比較して価格が高い傾向があります。
これは、メリットの部分で述べた耐環境性に優れた設計であることや、過酷な環境でも長時間連続して運転できることなど、民生用PCとは異なる特殊な設計や仕様による影響といえます。
そのほか、民生用PCに比べて生産量が少ないこと、定期メンテナンスや保守などのサービスにかかる費用が価格に反映されていることなども高価格になりやすい理由の一つです。
ただし、産業用PCは一度導入すると10年以上使用することも可能です。必要な機能を明確にして不要な機能が搭載されていないモデルを選ぶことで、価格を抑えられる可能性もあります。
②納品までの期間が長い
2つ目のデメリットは、納品までの期間が長いことです。産業用PCは、受注生産が一般的です。そのため、家電量販店やオンラインショップで選んですぐに購入できる民生用PCと比べて、購入して納品されるまでの期間が長くなる傾向があります。
また、形状や性能をカスタマイズする場合、納品までさらに期間がかかる可能性も考えられます。
なお、産業用PCの選定方法については、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、産業用PCについて、以下の内容を解説しました。
- 産業用PCの概要
- 産業用PCが注目される背景
- 産業用PCのメリット・デメリット
産業用PCは、粉塵や高温多湿といった過酷な環境にも耐えられる耐環境性や、現場に合わせたカスタマイズが可能な柔軟性をはじめ、産業現場での使用に適した複数のメリットを備えています。現場で使用する機器やシステムに導入することで、設備の監視から品質管理、データ収集・分析まで、幅広い業界・目的での活用が可能です。
『萩原テクノソリューションズ株式会社』では、生産設備や産業機器、社会インフラ機器、医療機器などに活用できる自社製組込コンピュータやマイコンボードなどの制御機器や表示装置などを提供しています。
お客さまのニーズに合わせた柔軟なカスタマイズに対応しているほか、厳しい基準でスクリーニング検査を実施して品質を確保しています。
また、自社の技術者が最適な仕様の設計・開発・製造からアフターサービスまで対応して、長期安定供給を実現。長期サポート体制も万全に整えています。興味のある方は、お気軽にご相談ください。