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車載電池の製造工程と品質検査に必要な装置

自動車には、駆動源へ電力を供給するための電池(バッテリー)が搭載されています。近年、電気自動車(EV)の市場拡大に伴って車載用蓄電地の市場が急速に拡大しており、2019年から2030年の間で16倍へと拡大することが見込まれています。


▼蓄電地における世界市場規模の推移

蓄電地における世界市場規模の推移

画像引用元:経済産業省『蓄電池産業戦略(案)


2050年カーボンニュートラルの実現が目標に掲げられている今、蓄電池は自動車をはじめとするモビリティの電動化において重要な存在となっており、デジタル基板を支えるインフラの一つとなることが期待されています。

これから車載電池の開発・製造を検討している企業では、車載電池の種類や製造工程、品質検査などについて気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、車載電池の代表的な種類や製造工程、品質検査に用いられる装置について解説します。

※2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標


出典:経済産業省『蓄電池産業戦略(案)』/環境省 脱酸素ポータル『カーボンニュートラルとは


目次[非表示]

  1. 1.車載電池の種類
    1. 1.1.鉛蓄電池
    2. 1.2.リチウムイオン電池
    3. 1.3.燃料電池(FC)
    4. 1.4.全固体電池
  2. 2.車載電池の製造工程
    1. 2.1.➀電極の製造
    2. 2.2.②セルの組み立て
    3. 2.3.③モジュールの組み立て
  3. 3.車載電池の製造は各工程での検査が重要
  4. 4.車載用電池の製造に用いる装置の導入事例
  5. 5.まとめ


車載電池の種類

車載電池は、自動車に搭載される電池です。ここでいう電池とは、充電によって繰り返し放電できる二次電池のことをいい、“車載用蓄電地”“車載用バッテリー”と呼ばれることもあります。

現在取り入れられている代表的な車載電池には、以下の4種類があります。


鉛蓄電池

鉛蓄電池は、従来の一般的な自動車のバッテリーに用いられている電池です。電極には鉛、電解液には希硫酸を使用しています。


▼鉛蓄電池の特徴

  • 低コストで製造できる
  • 安定した放電が可能になる
  • 繰り返し使用すると劣化が進みやすい など


産業用の非常用電源装置や船舶、小型飛行機、電動フォークリフトなどにも使用されています。


リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、電解液の正極と負極の間をリチウムイオンが移動することによって充電・放電を行う電池です。電極にはリチウムを含んだ化合物、電解液には有機溶媒を使用しています。


▼リチウムイオン電池の特徴

  • ほかの電池と比べて大容量の電力を蓄えられる
  • 軽量かつ小型での製造が可能
  • 鉛蓄電池と比べて環境負荷が少ない
  • 繰り返し使用しても劣化しにくい など


従来の車載電池として取り入れられている鉛蓄電池と比べて、軽量かつ小型、長寿命などの特徴があることから、主に電気自動車(EV)やモバイル機器などに使用されています。


燃料電池(FC)

燃料電池(FC)は、水素と空気中の酸素による化学反応によって発電する電池です。二酸化炭素(CO2)が発生せず排出されるのは水のみとなるため、環境への負荷を軽減できる車載電池として実用化されています。


▼燃料電池(FC)の特徴

  • 環境負荷を抑えられる
  • 水素が燃料となるため、ガソリンと比べてエネルギー効率が高い など


燃料電池(FC)を搭載した自動車は、水素ステーションで燃料の充填を行います。電気自動車と比べて短時間での充填ができるほか、走行距離も長くなります。


全固体電池

全固体電池は、電極の正極と負極の間に電解液がなく、電解質が固体で構成された電池です。電解質に液体を使用しないことにより、温度上昇や液漏れなどによる発火のリスクを抑えられます。


▼全固体電池の特徴

  • 大容量の電力を蓄えられる
  • 低温・高温での使用が可能
  • 設計・製造プロセスの自由度が高い
  • ほかの電池と比べて安全性が高い など


現在は研究開発段階となりますが、リチウムイオン電池に代わる次世代の車載電池として自動車分野での実用化が期待されています。



車載電池の製造工程

車載電池は、セル・モジュール・パックといった3つの単位で構成されます。


▼車載電池の構成

構成
概要
セル
車載電池の最小単位
モジュール
複数のセル接続した構成部品
パック
複数のモジュールを接続して筐体に格納したバッテリー


基本的な製造工程の流れは、以下のとおりです。


➀電極の製造

車載電池の原材料を確保して、電極(正極・負極)を製造します。


▼電極の製造工程例

  1. 正極材・負極材を調合して、ペースト状に練り混ぜる
  2. 金属箔に正極材・負極材を塗布して乾燥させる
  3. ロールプレス機で圧延を行う
  4. 圧延した電極を切断する


②セルの組み立て

電極の製造が完了したら、車載電池の最小単位となるセルを組み立てます。セルには円筒状・角型・ラミネート型などの形状があります。


▼セルの組み立て工程例

  1. 専用の機械で電極体を巻き取る
  2. 集電部の接続端子を接合する
  3. 電極体を缶に挿入する
  4. 電極液を注入して蓋の溶接を行う
  5. 充電・放電を行う
  6. 性能や品質、安全性について検査を行う


絶縁テープの貼り付けや集電部の接合、電池部品の缶への挿入、電極液の注入などについては、設備・装置によって自動化することが可能です。


③モジュールの組み立て

複数のセルを結合させて、モジュールを組み立てます。


▼モジュールの組み立て工程例

  1. セルの充電・放電によってエージングを行う
  2. セルの電極部分を溶接や端子台によって結合する
  3. モジュール用のフレームで固定する
  4. 性能や品質、安全性について検査を行う


セル・部品をモジュール組み立てのラインに搬送したり、電極部分の結合を行ったりする作業については、設備・装置によって自動化することが可能です。



車載電池の製造は各工程での検査が重要

車載電池の製造には、品質検査によって安全性・信頼性・耐久性などを確保することが求められます。各工程に対応した検査装置を利用して、電池の容量や形状、性能などに異常がないか、規格に準拠しているかを確認することが重要です。

品質検査に用いられる装置には、以下が挙げられます。


▼検査装置の例

工程
検査装置
セルの組み立て後
  • 保護フィルム貼付・検査装置
  • セルの寸法測定・外観検査装置
  • 出荷選別装置 など
モジュールの組み立て後
  • モジュールの外観検査装置
  • 電気特性検査装置 など


検査装置についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

  検査装置の主な種類。半導体や基板に用いられる電気特性検査装置について 製造現場では、製品・基板・部品などに異常がないか確認するために、検査装置による品質検査を行います。検査装置は用途や対象物によってさまざまな種類があるため、製造工程に応じて導入することが重要です。この記事では、検査装置の概要や代表的な種類について解説します。 萩原テクノソリューションズ株式会社



車載用電池の製造に用いる装置の導入事例

萩原テクノソリューションズでは、車載電池の製造工程で用いるさまざまな検査装置を製造しています。


▼萩原テクノソリューションズで製造した検査装置の事例

名称
特徴
TABリード溶接装置
基板や半導体チップに電極(リード)を超音波にて接合する
セル寸法測定
角型セルの2次元コードを読み取り、寸法測定・外観検査を行う
絶縁フィルム貼付け装置
絶縁フィルムリールから1枚切り出したものをセル蓋上部に貼り付けて、長辺側にはみ出している絶縁フィルムを折り込んで貼り付ける
モジュール化装置
セルをモジュール組立する



まとめ

この記事では、車載電池について以下の内容を解説しました。


  • 車載電池の種類
  • 車載電池の製造工程
  • 品質検査に用いる検査装置
  • 車載電池の製造事例


車載電池の市場規模は拡大しており、今後は自動車業界だけでなく、業務・産業用の定置用電池についても需要が高まると期待されます。

車載電池の製造には電極の製造やセルの組み立て、モジュールの組み立てなどの作業が発生するため、生産効率を高めるには各工程に合った設備・装置を導入することが重要です。

萩原テクノソリューションズ』では、車載電池の組み立てや充電・放電、検査などに用いる多種多様な検査装置・ソリューションを提供しております。グループ会社の萩原エンジニアリングとの連携により、車載電池の製造工程における各種装置を一貫して設計・製造することが可能です。

詳しくは、こちらのページをご確認ください。

  車載電池(組立/充放電/検査)|萩原テクノソリューションズ株式会社 IT・組込・FAの萩原テクノソリューションズ株式会社のページです。IT・組込・FA技術にエンジニアリング機能を加え、あらゆる領域に対応するトータルソリューションで、製造業の経営課題を解決します。 萩原テクノソリューションズ株式会社



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